周回遅れの日記

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携帯課税と新たなるガラパゴス規格

携帯電話に課税するという話が出て、ちまたでは騒ぎになってるみたいですが。

回線課税なのか端末課税なのか

まだ海のものとも山のものともつかぬ話ですからなんとも言えませんが。

携帯電話の回線契約と端末はワンセットで不可分である、というのが一般的な認識かもしれません。
ただ、現在では、端末なしで回線契約だけを行うこともできますし、逆に回線契約なしで端末を購入することもできます。この記事を読みに来るような人にとっては、むしろそちらの方が当たり前かも。
ですから、通信契約に課税するのか、端末に課税するのかが重要な問題になります。
両方に課税します、ということかもしれませんが…

回線課税だったら?

通信契約に課税するのだということであれば、有限の資源である電波を使う以上応分の負担をしてもらう、ということになろうかと思います。民間企業がやりにくい過疎地や離島のインフラ整備のために使う、ということであれば、ユニバーサル料金の延長線上で納税者の理解も得やすいでしょう。逆に、一般財源として使うのは難しいかもしれませんね。

その場合の課税の基準はどうなるのでしょう。
SIMの枚数に応じて課税というのが一番ありそう。
でも、IoTだM2Mで大量のSIMをばらまこうとしている通信業界からの反発は必須ですね。

端末課税だったら?

まず課税対象になる端末は何か、が問題です。
20年前だったら、携帯電話とPCの境目は明瞭でした。
でも今は「携帯電話に課税」しようにも、境界線がはっきりしません。
まあ4インチのiPhoneが課税対象だとして、いわゆる6インチ程度のファブレットはどうなるのでしょう。6インチなんて大きすぎて携帯電話としては使用に耐えないと私は思ってしまうのですが、モデムを積んでいてSIMスロットがある以上「携帯電話」となってしまうのでしょうか。
モバイルルーターやスマートウォッチの扱いも気になるところです。

これは何を課税の根拠にするのかにもかかわります。
民共有の資源である有限の電波を使う人には応分の負担をしてもらうのだ、ということであれば、モデムを積んでる以上全部課税対象だ、ということになろうかと思います。ただしこれだと、前記のように使途を限らないと納税者の理解を得にくいと思われ、一般財源として使うのは難しいのではないでしょうか。また、モデム付きで製造された端末であっても、そのうちのかなり多くの端末は実際にはSIMカードを挿すことなく、もっぱらWi-Fi接続で使用されている実態に合致していないようにも思われます。

そうではなくて、情報通信端末を多数持っている人はそれだけ所得が高く担税力があるから多く納税してもらうのだ、という考え方もあるでしょう。そうすると、モデムの有無にかかわらず、情報通信機器はすべて課税対象になるということになろうかと思われます。高所得者から高く取る税金であるという建前ですから、一般会計の穴埋めに使っても差し支えないでしょう。

いずれの考え方を取るにせよ、現代においては、携帯電話は日常生活に密着した必要不可欠な商品となりつつあります。
自動車税などでも指摘されていることですが、生活必需品をあたかもぜいたく品のように扱うのはどうよ?という批判を受けるのは必至です。

そういった批判に応えるためには、「ぜいたく品」である端末と、そうでない端末を峻別し、後者は課税対象から除外する、といった処理が必要になろうかと思います。
たとえばこんな感じ。

デュアルコア、1.5GHz以下
解像度は1280×800以下
Wi-Fiは5Ghzに対応してはならない
充電池は2000mAhを超えてはならない
メモリはRAM1GB、ROM8GBを超えてはならない
(外部ストレージはこの限りではない)

この基準を満たす端末は課税対象から除きます。
非課税端末を使うようにすれば、子だくさんの低所得世帯も大丈夫!

…まあ低所得世帯対策としてはそれでいいかもしれませんが、これは軽自動車のような、新たなガラパゴス規格の誕生です。
日本で「非課税端末」として販売するためには、この基準を満たすものを作らなければなりません。そうすると、日本で販売される端末がグローバル機とはどんどんかけ離れたものになっていきます。この(架空の)規格のもとではデュアルコアで作らなければなりませんから、性能を向上させようにもコア数を増やすことができません。となると、日本向けに特注のSoCを作ってもらわなければならなくなります。それは値段に跳ね返りますから、低所得者向けに低価格で提供したい端末なのにかえって値段が高くなる矛盾…

変な規格を作らないでください

私はどっちかといえば財政タカ派でして、携帯電話課税に必ずしも反対するものではございません。
取れるものからは取らねばならぬ、という悲痛な事情は重々承知しているつもりです。

ただ、上記のように、税制が原因で変な規格ができちゃった、みたいなことにならないようによくよく配慮していただきたいなあ、と思います。
「軽自動車」はガラパゴスといっても、道も狭けりゃ駐車スペースも狭い日本の国情に合致したよくできた規格だと思いますが、スマートフォンに関してはそういう事情はあんまり無いように思えます。